令和4年度車中泊避難所研修レポート
目次
はじめに
令和2年に車中泊避難所の取り組みを始めて2年が経過しました。車中泊避難に関する住民ニーズは高く、NPO・自主防災組織からのご依頼が多いものの、避難所の開設主体である自治体の取り組みが進まないことにジレンマを感じていました。令和4年1月に全国初の自治体による車中泊避難所に特化した「いの町車中泊避難所受入れ訓練」が高知県いの町で開催されました。
これを皮切りに令和4年度は自治体による取り組みも加速してきました。群馬県、新潟県、高知県が取り組みをはじめ、講師として呼んでいただき車中泊避難について、注意すべき点や受け入れ態勢などを、講義・ワークショップ・実地訓練などを通じてお伝えしてきました。
今年度、実施してきた車中泊避難所研修の様子をピックアップして報告します。
※ “避難生活における車中泊” です。”緊急避難で車を使用する自動車避難” とは異なるのでその点を留意ください。
車中泊避難所研修(徳島県三好市)
実施日時: 令和4年11月23日(水・祝) 9:30~12:00
実施会場: 池田高校辻校舎
主 催: 三好市社会福祉協議会
参加対象: 住民
研修内容: ①講義、②ゾーニング(駐車方法)の確認、③グループワーク、④車中泊仕様にするための工夫(見学)
地区の自主防災組織のメンバーをはじめとする、地域住民が多く参加しました。軽箱バン、軽4、一般的な5人乗り、8人乗りなど複数パターンの車両を配置し、実際に寝てみて寝心地を確認するなど、車中泊をする際の車両比較などを行いました。凸凹のある車両のフラットにする工夫や防虫シートを使った簡単な網戸の作り方などを説明しました。
車中泊避難所の可能性を探る(高知県高知市)
実施日時: 令和4年11月26日(土) 9:30~12:00
実施会場: 高知市たかじょう庁舎
主 催: 高知市市民活動サポートセンター
参加対象: 住民
研修内容: ①講義、②ゾーニング(駐車方法)の確認、③グループワーク、④車中泊仕様にするための工夫(見学)
高知市市民活動サポートセンターが毎年実施している防災事業。昨年度は要配慮者支援について研修を行いましたが、今年度は車中泊避難ニーズの高まりを受け、車中泊避難所について学びました。石灰で駐車スペースを引き、通常の駐車スペースである横幅2.5mと障害者用駐車場の3.5mと比較。単なる駐車場ではなく生活スペースが必要であること、エコノミークラス症候群対策では車内空間を広く保つ必要があるため、就寝時は衣装ケース等に荷物をまとめ、車外に置くことを考えると、通常の駐車スペースではスペースが足りないことなどを確認しました。
みんなで学び体験しよう車中泊避難(高知県高知市)
実施日時: 令和4年11月27日(日)13:30~16:00
実施会場: 高知市東部健康福祉センター
主 催: 高知ライオンズクラブ
参加対象: ライオンズクラブ会員・住民
研修内容: ①講義、②ゾーニング(駐車方法)の確認、③グループワーク、④車中泊仕様にするための工夫(見学)
高知ライオンズクラブ様より、防災研修の依頼をいただき、研修内容を複数提案させていただいた中で車中泊避難所研修を行うことになりました。駐車場のゾーニングを確認する中で、前前の向かい合わせ駐車(運転席からお互いが見える)、バック駐車(ハッチバックの開閉で支障が出る)などの駐車方法についても確認。4人家族以上が来て、車の隣にテントを張り車とテントで生活したい希望者が出ると思うが、認めるのかなどの疑問点が出され協議ました。結論としは、事前に最低限の受け入れ条件やルールを決めておかないと混乱をするので、事前に検討しておく必要があるという意見が出されました。
車中避難普及啓発研修会(群馬県前橋市)
実施日時: 令和4年12月1日(日)13:00~17:00
実施会場: 群馬県庁
主 催: 群馬県
参加対象: 自治体職員
研修内容: ①講義(車中泊避難所、健康上のリスク)、②グループワーク、③弾性ストッキングの着脱義、
他講師:新潟大学特任教授 榛沢和彦氏、 Office SONOZAKI代表 園崎秀治氏
この研修の特筆すべき点は
①検討ではなく普及啓発と本気度が伝わってくる
②参加対象が群馬県内の自治体職員(避難所の開設主体は自治体、運営は地域住民)。避難所設置主体の自治体が前向きに検討しないと車中泊避難所の取り組みは前進しないため、自治体職員対象の研修は感慨深いものがあります。
③エコノミークラス症候群の権威である新潟大学榛沢教授を迎えてのリスク検討を行った点です。
榛沢教授は講演の中で、エコノミークラス症候群のリスクとその対策について述べた後で「車中泊避難者は増加する。ならば安全な車中泊避難を」と締めくくられました。医療者の視点で反対するだけではなく、車中泊避難者が増加傾向にあると言う現実を踏まえて、リスク回避のために何をすべきか考えるきっかけになったと思います。
高知県自主防災組織人材育成研修(高知県内6会場)
実施日時: 令和4年12月1日、令和5年1月14日、15日、21日、29日、2月18日 13:30~16:30
実施会場: 高知県高知市、香南市、安芸市、四万十市、土佐市、室戸市
主 催: 高知県
参加対象: 住民
研修内容: ①講義、②グループワーク(車中泊避難所候補地検討、車中泊避難所機能配置)
高知県としては車中泊避難所をテーマにした初の研修となります。避難所運営を担う自主防災組織が参加対象で高知県内6会場で実施されました。車社会の高知県では大規模災害時に避難生活において車中泊を選択する住民が多いことが予想されます。研修では講義のほかに車中泊避難所の候補地選定と機能面の配置をどう行うかのワークが行われました。
車中泊避難対策を考える(新潟県)
実施日時: 令和5年1月19日(木)10:00~15:30
実施会場: 長岡震災アーカイブセンターきおくみらい
主 催: 新潟県
参加対象: 自治体職員、防災士、防災産業関連企業
研修内容: ①講義、②グループワーク(車中泊避難所候補地検討、車中泊避難所機能配置)③実地研修
新潟県では令和4年1月に自治体職員向けの車中泊避難所研修を行い今回が2回目ですが、昨年はコロナ禍によりWEB開催となったため、今年度念願の対面開催となりました。午前中は講演、候補地選定、車中泊避難所の機能配置の各ワークを実施。午後は実地研修を行いました。実地研修では㈱スズキ自販新潟様の協力をいただき、車中泊を行う上での留意点や工夫などの説明を行いました。
車中泊避難受入訓練(高知県南国市)
実施日時: 令和5年1月22日(日) 9:00~12:00
実施会場: 南国市地域交流センター MIRAIE
主 催: 新潟県
参加対象: 自治体職員、自主防災組織
研修内容: ①講義、②個人ワーク(車中泊避難所候補地検討、体育館避難所と車中泊避難所比較ワーク)③実地研修(受付、ゾーニング確認、車中泊留意事項・工夫)
南国市の主催で、自主防災関係者が参加しました。1時間の講義の後、駐車場に移動し、車中泊希望者の受付、ゾーニングの確認を行いました。当組織が行う研修ではマニュアルに沿った動きの確認ではなく、想定外やグレーゾーンをどう判断するかに重点を置いています。災害はマニュアルを守るではなく、どう運用していくかが試される場となります。研修では混乱を持ち込み、その混乱を楽しむようにお伝えしています。
さんすい防災研究所 研修会のご案内
車中泊避難についての講演研修
さんすい防災研究所では、車中泊避難所受け入れ訓練についての講演・研修を承っています。ゲーム形式で学べる「車中泊避難所設置・運営ワーク」も用意しており、ワークショップ形式や模擬訓練での研修にも対応可能です。
車中泊避難については令和2年に提言書を内閣府(防災担当)に提出。全国初となる車中泊に特化した避難所運営訓練(民間団体主催)を2回実施。この取り組みは内閣府の「新型コロナウィルス感染症対策に配慮した避難所開設運営・運営訓練ガイドライン」に事例紹介され、内閣官房「国土強靭化民間の取組事例集」などにも取り上げられるなど車中泊避難のパイオニアとして取り組みを続けてきました。
令和4年には高知県いの町が自治体としては全国初となる臨時情報を想定した車中泊避難所受入訓練を実施し、これに全面協力しました。令和4年度も複数の自治体(県)からも研修やアドバイザーの打診をいただいています。
車中泊=危険のイメージが先行していますが、自己責任で放置しているから危険なのであって、自治体が避難所として受け入れ条件やルールを設置すればリスク軽減は可能で、体育館避難所とのリスク比較をすることも重要です。特に南海トラフ地震の臨時情報対象地域では車中泊避難所の設置は避けて通れない課題です。(沿岸部の住民は車に荷物を満載して避難してくる)
多様な経験で培われた現場力とバランス感覚は、多くの研修や委員長職に結実し高い評価をいただいています。
これまで多くの自治体や関係機関から防災研修依頼(年間100本程度)をいただき、高齢受講生からも「専門用語や横文字がが少なくわかりやすい」、「現場体験に基づく話で説得力がある」(23の災害での現場支援)という評価をいただいております。
まずは、お気軽にご相談ください。
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