九州防災パートナーズ主催「車中泊避難」実証実験 -開催レポート

九州防災パートナーズ主催で車中泊避難実証実験が今年度5回開催され、講師(アドバイザー)として参加させていただきました。

※今回のテーマは “避難生活における車中泊” です。”緊急避難”(自動車避難) とは異なるのでその点を留意ください。

開催概要

主催:九州防災パートナーズ(山崎は講師として参加)

開催日/会場:

①2021年7月24日・25日 北九州市 穴生ドーム
②2021年8月14日・15日 北九州市 穴生ドーム
③2021年9月11日・12日 北九州市 穴生ドーム
④2021年10月9日・10日 大分県別府市 別府市営駐車場(地下駐車場)
⑤2022年1月29日・30日 北九州市福岡県営中央公園

「車中泊避難」実証実験のようす

①2021年7月24日・25日 北九州市 穴生ドーム

初回はなぜ車中泊避難所の検討の必要性について理解するため、講義、ゾーニングにあたっての留意事項を確認しました。

ワークに当たってては高知防災プロジェクト(さんすい防災研究所)が作成したワークシートを基に進めました。
ワークシートは下記参照。

車中泊避難所設置・運営ワーク様式集(PDF)

車中泊避難所の設置検討の必要性、法的な位置づけ、エコノミークラス症候群対策などについての講演が行われました。

講演後、グループワークを行い、車中泊避難所の設置場所検討、機能面の配置、エコノミークラス症候群対策として必要な支援策などを考えました。

駐車場のライン引きでは、通常の駐車区画(2.5m×6m)を設定。生活空間を考えるとどのくらいの広さが必要かを協議し、1.5台分(2台で3台分を共用)は必要という結論になりました。

また実際に車中泊をしてみての感想を出し合い、車中泊を行う側の準備や受け入れ側の支援について協議しました。

②2021年8月14日・15日 北九州市 穴生ドーム

1回目の振り返りや積み残したワークを中心に進めました。

受け入れ条件:
無条件に受け入れか、フラットな状態を保持できる人数だけ(エコノミークラス症候群対策、家族4人でフラットな状態を保てるのが2人のみの場合は2人は認めるが残る2人は一般避難所を勧める)とするかを協議しました。

車中泊避難所のルール:
アイドリングや駐車方法、ペットの扱い(ペット連れが多いと見込まれる)などについて協議しました。

一般避難所との連携:
避難所のあり方を協議した結果、車中泊専用の単独避難所ではなく一般避難所に併設した車中泊ゾーンとして設置した方が運営体制としても簡素化できることを確認しました。

③2021年9月11日・12日 北九州市 穴生ドーム

穴生ドーム3回目の実施はこれまでの課題の検証を中心に、対応事例、駐車方法、今後の訓練の方向性について協議しました。

対応事例集:
車中泊避難所で考えられるトラブル、クレーム、リクエスト(アイドリング、騒音、日中の休憩所)への対抗について協議しました。

駐車方法の検討:
対面駐車の場合の前列、後列、前後など幾つかのパターンを組み合わせて検討しました。

④2021年10月9日・10日 大分県別府市 別府市営駐車場(地下駐車場)

場所を大分県別府市に移し開催。

民間施設の視察:
別府市は緊急避難も含めて立体型駐車場を持つデパートやパチンコ店など民間施設と車避難について協定を結んでおり、その施設の視察を行いました。協定を結んでいる民間施設の一つは外付けのトイレがあるのが大きな利点。立体駐車場で外付けのトイレを設置している施設は少なく、夜間に施錠されるとトイレが利用ができなくなり、避難所としての機能が損なわれます。トイレ・水道の設置は避難所設置での必須項目です。

ゾーニングは営の地下駐車場を使っての実証実験を行いました。
(別府市は坂の町。駐車場も勾配を利用しているため地下=1階のため密閉空間ではなく通気性があり浸水リスクもない)。

⑤2022年1月29日・30日 北九州市福岡県営中央公園

最終回は福岡県営中央公園で実施し指定管理者にも参加いただきました。

同じ敷地内にある体育館(世界体操の競技場にもなった大規模施設)は災害時の大規模避難施設だが北九州市の管理となり、県営公園との指定管理者が異なるため、どういう連携が必要かも確認しました。

車の場合は個室状態となるため、安否や健康確認が困難になることが予想されます。ミニFMを利用しての情報発信やグループLINEを使用しての毎日の点呼などを行いました。

車中泊避難所が想定されるグランドでは、仮設トイレやごみ置き場などの機能面の配置を考えました。

駐車場の区画を新たに引く場合は普通車2.5m×6mのところ、障害者用駐車場の3.5m×6mとすること。これは就寝時には荷物を外に出すなどして広い区間を確保する必要があり、エコノミークラス症候群対策としては必須なので、車中泊避難希望者が多くても健康対策として譲ってはいけない広さであることを説明しました。

その他指定管理者として不安に思うことや疑問などを出してもらい参加者とともに課題を抽出し解決方法を話し合いました。

さいごに

開催レポートは以上となります。

さんすい防災研究所では、車中泊避難所受け入れ訓練についての講演・研修を承っています。ゲーム形式で学べる「車中泊避難所設置・運営ワーク」も用意しており、ワークショップ形式での研修にも対応可能です。

多様な経験で培われた現場力とバランス感覚は、多くの研修や委員長職に結実し高い評価をいただいています。

これまで多くの自治体や関係機関から依頼をいただき、高齢受講生からも「専門用語や横文字がが少なくわかりやすい」、「現場体験に基づく話で説得力がある」という評価をいただいております。

まずは、お気軽にご相談ください。