車中泊避難所の検討(シリーズ③)

第1章

1.車中泊避難所が進まない3つの要因(その3)

2)車中泊=危険なイメージ固定と国は推進していない?

①これまでに述べてきた緊急避難での自動車使用と災害発生後の避難所生活という全くフェーズ(局面)の異なる行動を「車中避難」という一括りの言葉での表現による混乱やエコノミークラス症候群が大きくクローズアップされたことにより、車中泊は危険のイメージが刷り込まれてしまいました。

 これについては今後、車中泊のリスク面のみの評価ではなく、体育館避難所とのリスク比較、車中泊希望者が多いという現実を踏まえた対策、車中泊避難のリスク軽減策といったところで検証したいと思います。

②国:内閣府防災の立ち位置

 自治体(県)に車中泊避難所の取り組みについて話をすると「国が推奨していないものを県が進めることはできない」市町村も同様に「国・県が推奨していないから検討できない」と言った返答が多いのに驚きました。

では国:内閣府防災は本当に車中泊避難を推進していないのか?

 代議士を通じて照会したところ「車中泊避難を否定をしているわけではない。ガイドラインにも車中泊避難をする場合の留意事項も記載している」「ただ多くの自治体が国が否定していると感じている現状は認識している」とのことでした。

 令和2年に高知県日高村で実施した全国初となる車中泊避難所受入訓練は、内閣府の防災担当者が実施内容についてヒアリングをし(コロナ禍で現地視察は断念)、下記のガイドラインにも好事例という形で紹介されています。また内閣官房が発行した「国土強靭化 民間の取組事例集」にも掲載されました。

 国レベルでは否定して訳ではないのに、自治体担当者は「国は推奨していない」という思い込みや誤解はなぜ起きているのでしょうか。

 これは推測の域を出ませんが車中泊避難の枕詞に使われるのが「やむを得ず車中泊・・・」とあるように、「やむを得ず(ほかに選択肢がない、あきらめ)」という言葉が最後の手段だから積極的に進めるものではないという認識につながっているように思います。

 これについては繰り返しになりますが、車中泊のリスクだけで判断するのではなく、災害関連死の大きな要因となっている体育館避難所とのリスク比較と、それぞれのリスク軽減対策の難易度によって判断されるべきだと考えます。

参考資料

内閣府:「新型コロナウィルス感染症対策に配慮した避難所開設運営・運営訓練ガイドライン改訂版」に掲載2020年9月7日 (P24-26)

http://www.bousai.go.jp/pdf/korona_0908.pdf

内閣官房国土強靭化 民間の取組事例集 令和3年4月はこちらから

https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/kokudo_kyoujinka/r3_minkan/pdf/043.pdf